幸いな人200502月号

 

素顔のアイドルたちと接する中で

        −金・名声・支配欲への警告

 映画の街、ハリウッド・バーバンク市に住んで3年、ロサンゼルスは12年めになる。自宅からは、ワーナーブラザース、ディズニー、ユニバーサルスタジオらに数分で行ける。映画「新ジーザス」のエグゼクティブ・プロデューサーの一員に抜擢していただき、2011年の完成をめざす日々。仕事柄、ハリウッドのプロデューサーやスターたちと出会う機会も多く与えられる。

2 ジャッキー・チェン、「‘タキシード‘(主演作品)は大嫌い。、、、ハリウッドは、むなしい。」

 ジャッキー・チェンにインタビューの機会を与えられたのは、彼の主演する映画「タキシード」が公開される直前だった。彼は、香港からロサンゼルスに移住しての日々、その日常生活にふれた後、主演した映画について話した。「今回の「タキシード」は、大嫌い。(hate `Taxied’ !)。ハリウッドに来てからの作品は、基本的にきらい。香港時代の初期の作品のような喜びはない。ハリウッドは、むなしい。」

「むなしい。」彼は、はっきりとそう言った。これからのスケジュールを聞くと、今夜は、共演したジェニファーロペスとディナーを共にする予定と言って笑った。hate `Taxied’ ! ` その言葉が耳に残った。

2 青白い女性アイドルたちの健気さ

 NHK時代、アイドル系の番組制作の機会も毎年、あった。当時は、「スマップ」はデビューしたてで、私は、ディレクターとして、「スマップは、まだ、うちでは出せないな。」という判断で、断っていた時代だ。

「忍者」、「ノリピー」、「浅香唯」、おにゃんこクラブの「生稲晃子」らとステージを組むと、1万人ぐらいは、すぐに集まった。「忍者」は、キャーキャーさわがれるのが、うれしそうだった。女性アイドルたちは、商品価値の高い、売れるときに売らねばと組まれた過密スケジュールの中で、睡眠不足、青白い、体調が悪そう。でも、スポットが当たると突然、笑顔になる‘健気さ‘が印象的だった。

 

3 アイドルの本質―自分たちは、ハンバーグ用の牛肉と同じ…大リーガー・ブレット・バトラー(LAドジャース)

 

アイドルの本質をしっかりとらえた著名人、それは、大リーガー、ドジャースのキャプテン、ブレット・バトラー選手だった。彼は、大学で物理学を専攻した理論派。小さな体で、ガンから、ドジャースのトップバッターに返り咲き、多くのファンを魅了し、機会あるごとに、主の証しをしていた。野茂英雄投手が日本からきたばかりで、マスコミ攻勢に頭を悩め、マスコミを遠ざけていた。でも、バトラー選手のためならと私との単独インタビューに応じてくれるほど、尊敬を得ていた。(野茂選手は、後に、イエス・キリストのトラクトを受け取ってくれた。彼の祝福をお祈りください。)バトラー選手は、ヤンキーズ、ジャイアンツ、ブレーブスと、何度も、トレードを体験していた。大リーグの選手にとっても、トレードはとても傷つくこと。彼は、言った。「自分が尊敬するある選手が、教えてくれた。自分たちは、ハンバーグ用の牛肉と同じ。鮮度や味が気に入られるうちは、喜ばれる、大切にされるが、少し、合わなくなれば、売り飛ばされるか、捨てられる、牛肉だと思っていればいい。このアドバイスは、大リーガー(アイドルはじめ、著名人)の本質。それを知ってから、傷つかなくなった。」彼は、有名になることの本質、無意味さをとらえていた。どんなに賞賛と注目を与えられ、有名人でヒーローであっても、しょせん「牛肉」にしか、過ぎないということ。

4 賢いバトラーが堕ちたワナ ー名声が罵声に変わる追体験

引退直後、賢いバトラー氏は、ワナに落ちた。ロサンゼルスタイムスのプラッシェキ・スポーツ記者は、「引退したので、今度は自分が子育ての責任を持ち、ブティック店を経営したいという妻を助ける。」と主夫をしている、バトラー氏に取材を申し込んだ。「家族」について取材したいということだったが、プラッシェ記者の真意は、別にあった。

オールスター選手であるマイク・ピアザ選手が、「自己中心的だ」という非難の言質を、バトラー氏から、取りたかったのだ。取材の合間に「ピアザは、自分勝手なんじゃないか?」と投げかけられた記者誘い水に、バトラー氏は、2言だけ応じた。「そうだね。世代が違うから。」翌日、ロサンゼルスタイムズは、「バトラーがピアザを罵倒した!」報じ、「引退した元選手が現役選手を批判すべきではない。」と、反発するドジャーズの現役選手の声等を多数掲載、バトラー選手は、全米のマスコミから集中砲火をあびた。バトラー氏は、「記者にだまされた。」とビデオでコメントを発表したが、失言した事実は消せなかった。翌々日は、LAタイムズは、スポーツ面1面にバトラー選手の顔写真を、鏡を割ったように、ぎざぎざに刻みこみ、「偶像が堕ちた!」と報じた。賢いバトラーにして、はまったワナ、「名声」が「罵声」に変わる「はかなさ」を追体験することになった。

5 有名になることのリスク −虚像と欲望の魔性

 有名になること、それは麻薬のようなものであり、また、虚構のセルフイメージをもたらす危険は大きい。官房長官、大臣、自民党の有力議員、、、。引退、あるいは落選後に、再び出会ったときの落差は、あまりに大きかった。地位、名声、権力の持つ、魔力の深さ、あるいは、いつしか、賢い人々の判断力を失わせ、「虚像」を作り上げていく、欲望の魔性を思わずにいられない。

6 神の栄冠に向けて走り抜けた三浦綾子 ―名声なんて、ゴミ箱にポイよ!

出会った著名人の中で、魔性の誘惑に惑わされず、主の光を発し続けながら、走り抜いた、方々もいる。三浦 光世・綾子夫妻もそうした模範を示し、綾子さんは、走り抜いて、天国へと凱旋された。

NHK旭川局時代、4年間あまり、ご夫妻を追ったドキュメンタリー番組「光あるうちにー三浦綾子・その日々―」を取材させていただいたときのことである。当時、綾子さんが推薦していた粉ミルク療法に、司法の手が入る情報が、大阪府警担当のキャップからもたらされ、推薦者の綾子さんのコメントがほしいと依頼状が届いた。私は「広告塔」的に扱われ、イメージが落ち、今まで主を証しした三浦文学の評価が地に落ちる危険性を感じ、深く心配した。そして、取材を拒否することを進言した。

綾子さんは、少しほほえみ、そして、りんとして、「名声ね。名声なんていつでもゴミ箱に、ポイよ。」と、さらりといってのけた。

捜査当日、三浦家のもとにメディア30数社から電話が相次いでいた。私は心配で、一緒にご自宅に待機、見ていたが、綾子さんも光世さんも、自分の体験や思いをそのまま伝えていた。「今日は、忙しいわ。」とけろっと笑っていた。そんな姿に私は、驚き、そして平安と尊敬を覚えていった。TV・新聞、週刊誌はいっせいに綾子さんのコメントを報道した。しかし、その後、この件は、立件されることなく、終わった。数ヶ月もして、話題にものぼらなくなった。「名声なんて、ごみ箱にぽい。」そのことを文字通り、実践した三浦光世・綾子夫妻の見事な模範が、私の心に深く刻まれた。イエス様の姿ともだぶる。私自身も、かくあるべしと思う、模範だった。

8 すべてを得たソロモン王の知恵「空の空。すべては空」(伝道者の書 1:2)

「神を恐れよ。神の命令を守れ。これが人間にとってすべてである。」(12:13)

ソロモン王は言う。「空の空。すべては空。」(伝道者の書 1:2) ソロモン王は、人間の欲望を満たす、すべてのものを手にしていた。

巨額の富と、知恵者として全世界に響き、世界の王たちが謁見を求めて旅をしてくる名声、700人の妻と300人の妾、強大な軍事力と人間を支配、コントロールする権力。そして、神殿を再建するという、主のすばらしいミニストリーを展開し、成し遂げ、栄誉をえた。しかし、彼は、それら、人間の欲望を満たすもの、すべてのむなしさ、無意味さの本質を味わい、見抜いていた。「私は、日の下行われたすべてのわざを見たが、なんと、すべてがむなしいことよ。」(1:14)

金、名声、地位・人をコントロールしたい心、これは、アイドル、有名人だけの欲望ではない。

私たち一人、一人が警戒すべき、ワナであり、私たちの心を蝕む危険である。

ソロモン王は、空しさの本質を見抜くと同時に、われらの心、置くべきポイントにきづいていた。「神を恐れよ。神の命令を守れ。これが人間にとってすべてである。神は善であれ悪であれ、すべての隠されたことについて、すべてのわざをさばかれるからだ。」(12:13)

われらが心定めるポイントは、キリスト、聖書への恐れ。アイドル(偶像)でもなく、金、名声、地位・権力といったワナではないよ。私のであった素顔の著名人たち、私が愛し、尊敬を覚える彼らは、こぞって、主からの警告と教訓を与えてくれているのではないかと思う。来年には、映画「新ジーザス」のキャスティング等に入ってくる。チア・にっぽんも祝福され、全国、あるいは海外の方々との出会いも大変、多くなった。「見よ。主を恐れること、これが知恵である。」(ヨブ28:28)このみ言葉をかみしめて歩みたい。

◆ プロフィール:  稲葉 寛夫

Ø       チアにっぽん代表/ 映画「新ジーザス」エグゼクティブ・プロデューサー

 

Ø       早稲田大学 法学部卒。 NHK ディレクターを経て、ロサンゼルス・フラー神学校世界宣教学部修士課程を卒業。ハーベストタイムでUSA 副主事を経ながら、2000年5月から「チアにっぽん(チャーチ&ホームスクーリングを進める会)を展開。毎年のコンベンションやセミナーは参加者増を続け、今年度のコンベンション、セミナーはすでに、のべ5,000人を数えている。

Ø       NHKディレクター時に「光あるうちに〜三浦綾子・その日々〜」(地方の時代賞ノミネート)「プライム10再出発の冬ー東京山谷の小さな教会」(NHK 番組制作局長賞)、その後、「ニューゴースペル〜YES・リック・ウェイクマンの世界」(ムービーガイド賞テレビ番組部門ノミネート)、「フミ〜神様の御手の中で〜」(ムービーガイド賞インターナショナル部門最優秀賞)など受賞作品ほか、150あまりの作品を制作。今年度は、「DVD聖書―マタイ・ローマ」、ドラマ系企業VP「エンパワーメント ーメンタルヘルスケアキャスター藤田朋子」ほかを制作。平行して、ハリウッドに在住し、聖書的・家族的映画制作をめざす。エグゼクティブ・プロデューサーを務めるハリウッド発の「新ジーザス」は、2007年のアメリカでの上映、(その後、各国の言語にて世界で上映)をめざしている



Hiro Inaba